この1週間で C# Design Notes が4件立て続けにアップロードされました。
- Added: LDM Notes for Nov. 18, 2019 #3032
- Added: LDM notes for Dec. 11, 2019 #3027
- Added: LDM Notes for Dec. 16, 2019 #3036
- Added: LDM notes for Dec. 18, 2019 #3039
あと、1件、提案ドキュメント追加:
Nov. 18: パターン マッチ
C# 9.0 でいくつか「パターン」の追加が検討されています。
- パターンの組み合わせ:
not,and,orとかで、パターンの組み合わせたり条件を反転させたり - 括弧つきパターン:
x is (pattern)みたいなやつ。andとかの優先順位の明確化用(x is (pattern1) and (pattern2)とか) - 関係パターン:
x is < 3みたいな感じで大小比較
Nov. 18 の Design Meeting ではこの辺りに関する検討があったみたいです。
-
括弧つきパターンは 1-tuple (1要素のタプル パターン)と区別がつくか
- 1-tuple の方を
x is (Item1: var tupleVal)みたいに名前(この例でいうとItem1)必須にすれば区別はつく
- 1-tuple の方を
-
関係パターン
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正直、構文として `x is >= 3 and <= 5' みたいなのはきもい
- 2項演算子を単項的に使う構文になれてなさすぎる
- でも、
x is int 3..5みたいな「range パターン」と違って「両端を含むかどうか」で悩む必要がない明瞭さがある -
ユーザー定義演算子をどうするかという問題もあり
x is nullみたいな「定数パターン」ではユーザー定義演算子は呼ばれない- でも、
x is < 3とx < 3で挙動が違うのはいいのか
-
x is < 3とかは暗黙的にx is int i && i < 3みたいな型チェックが含まれるx is not <3とx is >= 3が同じ意味にならない
-
正直、構文として `x is >= 3 and <= 5' みたいなのはきもい
-
パターンの組み合わせ
- 今の提案では、今後、パターン中での
not,and,or` がキーワードになる - これは既存のコードを壊す可能性がある
- どこまでこの breaking change を許容できるものか要検討
- 今の提案では、今後、パターン中での
Dec. 11: Records
key 修飾(records の等価比較)
Dec. 11 は Records がらみの検討があったみたいです。
以前も書いた通り、「Records」と呼ばれる機能は独立した小さな機能に分解して実装が検討されています。
この日は、等価比較 (Equals メソッドや == 演算子)の生成に関して、key 修飾子を追加しようかという話です。
以下のように、key 修飾子を付けることで、そのメンバーの比較によってクラス自体の等価性を判定(する Equals メソッドなどを生成)しようという話。
class C
{
public key string Item1 { get; }
public string Item2 { get; }
}
検討事項としては、これ単体では Records 的な機能としては足りていない(コンストラクターを書かなきゃいけないようでは「何度も同じ名前を書かないといけなくてつらい」問題の対処にならない)とか、
クラスの場合に mutable なプロパティで Equals を実装してしまうと Dictionary/HashSet の動作を狂わせてしまうので避けたいとか、
そういう問題にどう取り組もうかという感じ。
構文がこれでいいか(`key' を使うかとか、どうつけるかとか)は置いておいて、議題としては前向きに取り組みたいという様子。
nominal vs. positional
nominal っていうのは new C { Item1 = 1 } みたいなやつで、positional っていうのは new C(1) みたいなやつのこと。
8月頃に原案が出ていたので紹介していますが、
それぞれ init-only、primary constructor という提案が出ています。
今回はこれら再検討というか、それぞれバラバラに提供できるか、混ぜて使って使用感はどうか、 「primary constructor は既存の戦略(普通にコンストラクター呼び出し)の延長線上なのでいいが、init-only は大丈夫か」とかそういう話でした。
Dec. 16: switch
Dec. 16 は switch の改善が議題に。
旧来の C# の switch ステートメントは、C++ の影響を色濃く受けていて、使い勝手的にいまいちだとよく言われています。
それに対して、C# 8.0 では switch 式を導入したわけですが、
C# 8.0 時点で未解決の問題として、戻り値がない場合をどうするかというものがありました。
単に、switch 式の各枝に void なものを認めようという提案も出ていましたが、「末尾に ; が必須になるのがちょっと嫌」とのこと。
代わりに、2つ提案が出ています。
-
Proposal: Enhanced switch statements #3038
- ステートメントの方の
switchでも、=>を使った「枝」の簡素化(caseラベル撤廃&breakなしで OK にする)をしたい
- ステートメントの方の
-
Proposal: Block-bodied switch expression arms #3037
- 式の方の
switchで、各枝に{ statement1; statement2; ... }みたいな複文を認めたい
- 式の方の
トリアージ
Dec. 16 ではその他ちょこっとトリアージがあったみたいです。
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private なフィールドに対する確実な初期化判定
- 先に warning waves (警告出すかどうかの選択権)が必要。それ以降ならいつでも
-
catch付きのtryブロック内にyieldを書けない問題- 今もうこの制限がある意味はあまりない(
await導入時に解決済み)ので緩和したい - いつでも
- やるなら合わせて非同期イテレーターでもやる
- 今もうこの制限がある意味はあまりない(
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generic operators
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ジェネリクスがらみは「型推論に失敗するときでも、型の明示で解決できる」状態にあってほしい
M(x)で型解決できない書けないときに、M<T>(x)と書けばいいみたいな
- 演算子の場合、これに対するいい解決案が思い浮かばないのでリジェクト
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ジェネリクスがらみは「型推論に失敗するときでも、型の明示で解決できる」状態にあってほしい
-
引数に対する
nameof-
引数のスコープは「メソッド内」なので、メソッドに付けてる属性中で参照できない問題がある
[return: NotNullIfNotNull(nameof(x)] T M(T x)みたいなのが書けない
- 認めたい。いつでも
-
引数のスコープは「メソッド内」なので、メソッドに付けてる属性中で参照できない問題がある
Dec.18: nullable issue
Dec. 18 は null 許容参照型がらみ。
pure null チェック
パターン マッチで、以下のような書き方は暗黙的に null チェックを含みます。
x is { }x is object
x is null や x == null と書くとそれ以降は「x は null ではない」判定が働くのに、これら x is { } や x is object などでは現状は判定が通っていません。
これらも null 判定に含めたいとのこと。
var?
型推論はしたいけど、null 許容性だけを変えたいということがあります。
var current = myLinkedList.Head; // 連結リストの先頭とかで、not-null 指定あり
while (current is object)
{
...
current = current.Next; // not-null と推論された current に null が渡る可能性あり。警告
}
こういう時のために、var? という書き方を導入したらどうかという案が以前に検討されています。
それを再検討。
Unconstrained type parameter annotation
null 許容参照型で一番困るのが制約なしのジェネリクスです。
LINQ の FirstOrDefault みたいなやつの戻り値をどう扱うかで、そのために T?? という記法を導入したいとのこと。
- ジェネリック型引数にだけ付けれる
-
意味としては
defaultを返す/受け付ける- 結果、参照型に対しては null があり得て、非 null 値型には null があり得ない
